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短編『私の最高のコマネチ』



俺の名前は伊藤(21)
デパートの警備員をしている。
俺の立っているこのデパートの1階は、女性向けの洋服やアクセサリー、靴、化粧品などの店が立ち並ぶフロアだ。

明るい照明に清潔な白い床とやわらかい木目調の壁。
それに、女性特有の甘い香りが漂ってくる。
もちろん男の、しかも警備員の俺には無縁の場所だった。


今日も平和だなぁ。
俺は警備員という職業柄、人間観察を楽しむようになっていた。
あ、いたいた。
とある洋服店で接客している一人の女性店員。

名前は青木 桐花さん。
年は俺より5つぐらい上だと思う。
白いジャケットに白いスカート、それに黒いストッキングを履いている。
長い茶色い髪に、美しい顔立ち。
このフロアは美人の店員が多く、彼女もその一人だった。

俺が彼女に興味を持ったきっかけは、彼女の勤めている店は入り口に近く、嫌が応でも姿や言葉が目や耳に入ってしまうからだ。
彼女は見た目だけでなく、心も美しい女性だった。
若い女性からお婆ちゃんまで、誰にでも丁寧な言葉遣いで親切に接し、まさに接客の鏡のような存在だった。


それに彼女は毎朝俺に会うたびにあいさつしてくれた。
デパートの店員の中にはあいさつしない人も多い。
警備員の俺を背景の一部みたいに考えてるやつもいる。
そんな中、彼女はいつも笑顔で気持ちよく「おはようございます」とあいさつしてくれてとてもうれしかった。

彼女にお近づきになりたいなぁ。
そんな淡い願望が芽生えるたびに俺はそれを打ち消した。
ブサイクでこれといったスキルも収入も持ち合わせていない俺が彼女と釣り合うはずがない。
それにもしデートに誘って断られたりでもしたら、俺はこの場に居づらくなる。

このままでいい、現状維持が一番。
彼女の姿を見続けられるだけで幸せなんだ…



そんなある日、ネットをしていると変なバナー広告を見つけた。

『この広告は100000人に一人しか表示されません。あなたは選ばれし者です。幽体離脱のやり方教えます』

明らかに怪しい広告だった。
でも、ウイルス対策ソフトも入れてるし、大丈夫だろうと軽い気持ちでクリックしてみた。
その時はそれが俺の人生を変えるものだとはまったく思わなかった。

そこには黒い背景に白い文字でイラスト入りの解説が書かれていた。
中国の漢方みたいなリアルな人体のイラストからもう一体の魂が出ている。
冗談半分で手順通りにやってみると、本当に体が浮き上がり、幽体離脱できたのだ!!

「ウソだろ!?」

自分でも信じられなかった。
しかし、真下でパソコンの前で倒れている自分の肉体がある光景も、浮遊感も事実だった。
それから毎晩幽体離脱の練習をしているうちに、幽体だと壁などの物体をすり抜けられること、他人に乗り移れることがわかった。


「ゴクリ…」

あのサイトを発見してから一週間が過ぎた。
今日は平日、俺は非番だった。
俺はついに決意した。
今日、青木 桐花さんに憑依しよう。
後ろめたい気持ちはあったが、彼女への欲望と彼女のことをもっと知りたいという気持ちが勝った。

俺は呼吸を整え、ベッドに横たわり、幽体離脱した。
ネオンの街を通り抜け、いつもの出勤先に向かう。
時刻は午後9時半。
デパートは8時で閉店なので、客の姿はいない。
数人の店員が残って後片付けしているぐらいだ。
BGMも止まっていて、閑散としていた。


俺は青木さんの勤める洋服店のフロアに侵入した。

「あれ…いない」

もう帰ったのかなぁ?
壁をすり抜け、もっと奥を探してみる。

「いた!」

レジの奥に人が三人座れるかどうかの小さなスペースがあり、そこに青木さんがいた。
一人パソコンのキーボードを叩いている。

「どれどれ」

背後からパソコンの画面をのぞき込むと売上表のようだった。
さすが青木さん、接客だけじゃなくてこういうのまでこなせるなんてすごいなぁ。
俺とは正反対だ。

俺は昔からなぜか人に嫌われやすかった。
別に他人が嫌がることをしたわけではない。
ただなんとなく、嫌われやすかった。
きっと俺が無駄にやさしくて、ブサイクで、無能だったからだろう。
だから俺は自分とは性別も能力も正反対な青木さんに純粋な憧れを抱いたのかもしれない…


女性は対外的には澄ましていても、一人になるとだらける人もいる。
しかし、青木さんは一人でも背筋がピンとしていて、理想通りだった。
ときおり目をこすっている。
やはり疲れているのだろう。

「どうしよう…」

俺の悪い癖だが、ここに来て気が引けてきた。
なんだかこんながんばってる青木さんに、自分の欲望のために乗り移るなんてかわいそうだ…
と、考えに耽っていると、青木さんがパソコンを閉じて立ち上がった。

「あっ!」

「うっ!」

二人同時に声をあげた。
立ち上がった青木さんが偶然にも幽体の俺と重なってしまったのだ!
次の瞬間、肉体の感覚が戻ったと同時に俺はバランスを崩し、机の上にしり持ちをついてしまった。


「いてて…」

あれ?俺の口から女性の声が漏れる。
自分の手を見てみる。
長い指にマニュキュアに彩られた爪。
胸はふくらみ、黒いストッキングを履いている。

「は、はからずも青木さんに乗り移ってしまった…」

青木さんの声は艶があって、高校野球の球場の女性アナウンスの声に似ていた。


俺は自分の姿を確かめるべく、店に出た。
慣れないハイヒールなので、ときおり転びそうになり、そのたびに近くのレジのカウンターにしがみついて耐えた。
洋服店なので、幸い鏡はすぐ見つかった。

「わぉ!」

青木さんがアメリカンガールのような声をあげる。
鏡に映っていたのは紛れもなくいつも見ている青木さんの姿だったからだ。

「ほんと美人だなぁ」

鏡に顔を近づけると、鏡の中の青木さんも俺に顔を近付いてくる。
普段はじっくりと見れない正面からの青木さんを近距離からじっくり拝む。
淡いピンクの口紅に、青いイヤリング。
こうして近くで見ると、メイクって芸術品だなぁ。
それに肌がきれいだ♪


そうだ!せっかくだから普段は絶対青木さんがしないことをしてみよう!!
俺は鏡の前でガニ股になり、腕を左右に振り上げた。
そして…


komaneti.jpg



「コマネチ!コマネチ!」

美人の青木さんが恥ずかしげもなくコマネチをしている。
脚は下品に広がり、スカートの股の部分には▼ができていた。
はぁ~ コマネチ最高!!

「こ、こんな姿、伊藤君にしか見せてあげないんだからねっ!」

青木さんの声でそう言ってみた。


ふぅ…
我に返り、周囲を見渡す。
幸い周りに人影はなかった。
それに静かなので誰か近付いてきても足音でわかるだろう。

俺の周りにはたくさんの婦人服が並んでいる。
いつもはただ眺めることしかできない服が。
そう、いつもはただ眺めることしかできない。
しかし、今は『着る』ことができる。


ハンガーに吊るされている白い一着のパンツスーツが目に止まった。
そういえば青木さんっていつもスカートスタイルだよなぁ。
パンツルックも似合うんじゃないか?

ドキドキしながらパンツスーツを手に取る。
女性物のやわらかい手触り、匂い。

着てみたい…

純粋にそう思った。
好きなキャラの着せ替え人形で遊ぶ子供のように。



ま、まずは脱がなきゃなぁ

俺はジャケットの裾に指を入れ、ふわりとしたスカートを床まで下した。

「おぉ!」

ストッキングで覆い隠されているとはいえ、青木さんの▽ゾーンが露わになる。
彫刻のようにしなやかな美しいラインだった。
パンツスーツ履く時ってストッキング脱がなきゃいけないのか?
どっちもいいや、と思いつつ、俺はストッキングに指をかけた。

ぷるぷるの青木さんの生脚がだんだん明らかになる。
しかもAVみたいに自分の好きなスピードで楽しめる。

「青木さんの色は白かぁ」

俺は自分の履いてるショーツを凝視しながら青木さんの声でそうつぶやいた。


次に白いパンツスーツを手に取り、脚を通してみた。
ズボンだから男と同じだと思っていたが、男と違い、おしりに余裕があり、逆に前は断崖絶壁のように垂直になっている。
まぁ、男のように余計な物が付いてないから当然か。
鏡には、社会の窓を全開にした青木さんの姿が映し出されている。
せっかくなので記念に俺は立ちションのポーズを取ってみた。

「やわらかい…」

次に俺は自分のおしりをツンと突き出し、自分のおしりをなでまわしながらパンツスーツの感触を楽んだ。
レアな青木さんのパンツスーツ姿…
パンツスーツでも全然イケた。
ますますデキる女に見える。


それから周りにあるいろんな服を着て、一人ファッションショーを楽しんだ。

「こういうの伊藤君が好きかなぁ♪」

いろんな服を試着しながら、青木さんの声で甘くつぶやいてみる。
俺の妄想の中では『俺とのデートを前に服選びにお熱な青木さん』という設定だった。

売り物を弄んでいるという背徳感はあったが、ここの店員だから怪しまれないだろうという安心感があった。
俺は男なので女物のコーディネートはわからない。
そのためメチャクチャな配色のコーディネートになってしまうこともあったが、結論から言うと青木さんは美人なので何を着ても似合った。
ほんと美人って人生イージーモードだなぁ。
マネキンの服も着ようと思ったが、元に戻すのが大変そうなのでやめておいた。

20分ぐらい経っただろうか。
さすがに飽きてきた。
というより、体がしんどい。
何せ青木さんの体は残業して、それから俺の一人ファッションショーにまで付き合わせたんだから。
翌日の業務に支障があったりしたら申し訳ない。
そろそろ抜けるか。


でも、せっかく青木さんに乗り移ったのにこのまま手ぶらで帰るのはもったいない。

「そうだ!!」

俺はいいことを思いついた。
レジのカウンターの中を探し、ギフト用の箱を見つけた。
それに俺の(青木さんの)ショーツを脱いで入れた。

そのまま床のストッキングを持ち上げ、履く。
直履きなのでつるっとした変な感触がした。


次にレジの横にある紙製のポイントカードを手に取った。
20ポイントの欄だけ大きく「5000円引き」と書かれている。
俺はそこにキスをした。
くっきりとセクシーな青木さんのキスマークが残った。

俺はそのポイントカードをギフトボックスの中に入れ、ついでに髪の毛を数本抜いて中に入れ、ふたを閉めた。
これで青木さん特製ギフトボックスの完成だ!!
俺はその箱を持ってデパートを出て、近くのコンビニに入った。

そして箱を宅配便で送った。
送り元は適当に、送り先は俺の住所を書いた。
女なのに男のような字なので、店員が少し驚いていた。

俺は鼻歌交じりでコンビニを出た。
これで数日後には青木さんパンティーセットが俺の物になる♪
しかも刑法上、これは窃盗ではない。
あくまで「青木さん本人が勝手に自分の持ち物を送っただけ」だ。


すべての用事を済ませ、店に戻り、青木さんがパソコンを打っていたスペースに戻った。
そしてパソコンの横で机にうつぶせになった。
これで俺が抜けた後、青木さんは疲れて居眠りしてしまったと思い込むはずだ。

「ありがとう」

俺はそう言い、青木さんの体から抜けた。

「う、う~ん…」

数十秒後、青木さんの意識が戻った。
「あれ?」という風にキョロキョロ周りを見渡していた。
そして立ち上がると、自分がショーツを履いてないことに気づいたようだ。

慌てて女子トイレに駆け込んだ。
だが、女子トイレにあるわけはない。
1分後、彼女は顔を赤めながら女子トイレを出て、うつむき加減でそそくさと戸締りを済ませ、早足でデパートを出て行った。

「なんか悪いことしちゃったかなぁ…ま、いっか」

俺も自分の家に戻った。




――――翌日

俺はいつも通り出勤し、配置についていた。

「おはようございます」

デパートに入ってきた青木さんがいつものように俺にあいさつしてくれた。
そのまぶしい笑顔が痛かった。
まさか昨日のパンツ泥棒が目の前にいるとは夢にも思うまい。

去っていく青木さんの美しい後ろ姿を見ながら、俺は早く青木さんスペシャルセットが届かないかなぁ、と願った。



(短編『私の最高のコマネチ』おわり)




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