『憑依警察24時』



俺の名前は山岸正男(32)。
憑依警察の刑事をしている。
憑依警察とは、憑依を悪用する輩から市民を守る組織だ。

例えば、憑依能力を持つ悪人が、殺したい相手に憑依して、ビルから飛び降り、
落下途中で体から抜ければ、簡単に殺人が実行できる。
しかも、世間的には“自殺”として処理されるため、証拠も残らない。
憑依警察は、そういった普通の警察では手の届かない事件を担当する組織なのだ

もちろん一般市民にはその存在は知られていない。


さて、今回追ってる犯人は、杉川雅人(27)。
すでに体は逮捕しているが、魂が見つからない。
幽体でどこかに逃亡中だ。

杉川の容疑は、下着泥棒。
普通の下着泥棒は、ベランダなどに干してある下着を狙うが、やつは家から一歩
も出ずに実行した。
すなわち、やつは自室の布団に寝て、幽体離脱し、近所に住む女性たちに憑依し
た。
そして、被害者女性の体を使って下着を盗み、盗んだ下着を自分の郵便受けに入
れていた。
やつの部屋からは大量の下着が見つかった。
悪質な手口だ。


俺は一人、やつの経歴の載ったファイルを閲覧しながら、署内で待機していた。
灰色のデスクが立ち並ぶ部屋には、同僚たちがうつぶせで寝ている。
時計の秒針だけが響いている。

その時、電話のベルがけたたましく鳴った。
同僚の荒木からだ!

「どうした!?」

「犯人が見つかった!すぐに○×町に来てくれ!!」

「わかった!!」

すぐに背広をひるがえし、飛び出す…のは普通の警察だ。
俺たち憑依警察は、机にうつぶせになる。
そして、幽体離脱した。
少しまぬけな格好だが、銃を持った犯人を捕まえるには銃が必要なように、他人
に憑依する犯人を捕まえるためには憑依が必要なのだ。


壁をすり抜け、空中を飛行し、現場に急行する。
現場には、半透明の荒木がいた。
一般人には、幽体の俺たちの姿は見えない。
ただし、同じ憑依能力者の犯人には俺たちの姿が見えるので注意が必要だ。

「杉川は!?」

「それが…見失っちまった…。誰かに憑依して隠れてるんだろう。まだ近くにい
るはずだ」

時刻は夜8時。
夜の町には、会社帰りのサラリーマンやOL、女子高生、風俗嬢などであふれて
いる。
この中から杉川を探さなければならない…

だが、まだ近くにいるとなれば、必ず何か手掛かりはあるはずだ。
他人に憑依しているなら、必ずおかしな部分や違和感がある言動をする。
それに、俺にも憑依警察としてのプライドがある。

「よし、包囲網を強化しよう。絶対にこの町から出さない。その隙に俺が必ず犯
人をとらえてみせる…」


俺は荒木と別れ、夜の雑踏に飛び込んだ。
黒いパンツスーツを着たボブカットの女性が歩いていた。
よし、あの体を借りよう。

憑依取締り法第三条により、捜査上必要な一般市民への憑依は許されている。
俺は上空から彼女の体にすべりこんだ。
視界が切り替わり、生身の体の感触が戻る。

自分の体を見下ろすと、スーツの胸元は大きくふくらみ、爪は赤いマニュキュア
に彩られていた。
ショーツがおしりをキュッと引き締めていて、男の体と違っておしりが窮屈だ。
捜査でなければ、お茶をしたいぐらいの体だ。

前髪が切りそろえられていて目にかからないのはうれしい。
スカートではなくパンツスーツなので、万が一格闘戦になっても大丈夫だろう。
俺はOLとして夜の雑踏に溶け込んだ。

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