憑五郎の「オリジン」




神河ーー

いにしえの時代、ここで人間と神による大きな Ikusa(戦)があった。
これにより、人間と神の距離はグッと縮まった。
それから悠久の時が流れ、Ikusa の傷跡は癒されつつあった。


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そんな中、とある里で憑五郎は生まれた。
憑五郎はすくすくと育ち、様々な sensei(先生) から秘儀を学んだ。
秘儀はかつて神の呪文であったが、人間と神が近づいた結果、人間の中にも使える者が出てきたのだ。


だが、憑五郎が十六になったある日、破局は突然訪れた。
異形の軍勢が里を襲ったのである。


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憑五郎は必死に戦った。
だが、里は燃やされ、家族も目の前で無慈悲に殺された。
彼自身も Rachi(拉致)された。
他の大勢の里の人間と同じく…








憑五郎は目覚めた。

ここはどこだ…?

見慣れぬ物がたくさん置かれている。
それは少なくとも心地の良い物ではなかった。

彼は自分の体に違和感を覚えた。
そして、自分の姿を見て、言葉を失った。


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彼の体はメチャクチャに改造されていた。
様々な生物のパーツがくっつけられ、実体すらあるか怪しかった。
彼は監視の目をくぐり抜け、逃げ出した。
愛する里に戻るためにーー



里では生き残った者と、隣の里の者が共同で片付けを行っていた。
彼らは憑五郎を見るなり、ある者は怯えだし、ある者は敵意をむき出しにした。
その中には憑五郎がかつて恋い焦がれていた少女もいた。
彼女は顔を引きつらせ怯えていた。
おそらく憑五郎の姿が里を襲った者たちに見えたのだろう。

勇敢な老人の一人が Takeyari(竹槍)で憑五郎を突いた。
それは彼の体をすり抜けた。
憑五郎は自分が生きてすらいないことを悟り、退散した。


憑五郎は不条理と戦っていた。
彼には運命を呪う権利があった。
里のために必死に戦ったが、自分にはもうどこにも居場所がない…

そこに一部の神々が襲い掛かってきた。
現し世でも隠し世でもない彼の存在を認めず、処刑するためである。
憑五郎は戦った、世界が光に包まれた。
彼の能力が発現したのである。


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気が付くと憑五郎は見慣れぬ地に来ていた。
一人の少女が彼を見下ろしていた。


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「あなた、変わった幽霊ね」

少女は憑五郎を見ても怯えることなかった。

「ここは…?」

「オルゾフの土地よ」

「オルゾフ…?」

「オルゾフを知らないの? あなた、ラヴニカの人間じゃないわね…」


そこはラヴニカと呼ばれる次元であった。
彼は神との戦いの最中、自分でも気づかぬうちにプレインズウォーカーとしての能力を発現させ、この次元に渡ったのである。
彼女はシルナと言い、10存在するギルドのうちの、オルゾフというギルドに所属する娘らしかった。

興味本位か、彼女は家に憑五郎を招き入れた。
彼はそこに Isourou(居候)することとなった。
彼女の親は資産家らしく、家は広く豪華だった。
彼はそこで彼女からラヴニカについて聞き、彼女もまた彼の異国の話を楽しく聞いた。

彼はオルゾフで憑依について学んだ。
彼の憑依はちょっと特殊で、本人の意思と関係なく完全に精神を支配するものであった。

憑五郎はシルナの勧めで、一人の年頃が同じくらいの債務者の男に憑依した。
再び生身を得た彼は、彼女の召使いとしての役割を務めた。
そのうちに、彼女は非常に才気あふれるが、気が強くて協調性に乏しく、友人がいないことを理解した。


2年後、シルナは晴れてオルゾフの法術師となった。
憑五郎が体を借りていた男の債務も切れた。
彼はこの次元が好きだし、自分を拾ってくれたシルナに感謝していた。
だが、もっと世界を知りたい、子供の頃教わった秘術を完成させたいという思いは止められなかった。

憑五郎は旅立つことにした。
シルナは別れを惜しんだが、同時に今の仕事に追われているようであった。
彼は様々な次元を渡り歩き、様々な生物に憑依した。









とある次元で、憑五郎は追われている少女を見つけた。
どうやら村が敵国に攻められ、壊滅の淵に陥っているようであった。
少女の向こうでは火の手が上がり、生存者は絶望的だった。
憑五郎は少女の姿を過去の自分と重ね合わせた。
憑五郎は少女に近づいた。



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少女は泣いていた。

大丈夫、君はひとりぼっちじゃない…

僕が憑いてるよーー



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「いたぞ!殺せ!!」

兵士達の足音が近づいてきた。
憑五郎はゆっくり息を吸い込んだ。
そして振り返ると同時に吐き出した。

憑五郎の手から光と闇の秘儀が放たれ、兵士達に向かって行った。

「ぎゃっ!」

「ぐえっ!」

直撃した兵士の頭が次々と吹き飛んでいった。

「な、なんだこいつは…」

「魔女だぁ!!」

残った兵士達も一目散に逃げて行った。
憑五郎は少女の魔力のポテンシャルに驚いた。
そしてゆっくりとめくれたスカートを元に戻した。







この世は不条理で満ち溢れている。
おそらくどんな文明が発達した次元でも、戦争や犯罪は無くならないだろう。
もしかしたら自分がやってることは、世界や自分を救うためではなく、苦しみを引き伸ばしているだけかもしれない…

時々、そういう不安に駆られる。
それでも彼は傍観することはしたくなかった。

「また行くのね、憑五郎」

神無き祭殿を立ち去ろうとすると、シルナに呼び止められた。

「あなたは私の召使いってことを忘れないでよ!」

「わかってますよ、お嬢様」

「それから、私よりかわいくなってたら許さないんだからね!!」

憑五郎はクスッと微笑んだ。
彼の前に光の門が現れ、その中に消えて行ったーー



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(憑五郎の「オリジン」 完 )







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Ilust. Free sozai



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