憑依してGO! その8(完)




ブルルルゥ…

夜道で一台のタクシーが止まった。

「釣りはいらないよ」

そう言って健二は運転手に千円札を二枚手渡して降りた。
それに続き俺も降りる。
アルコールが入ってるのと、履き慣れないブーツのせいで、少しフラッとした。
ドアが閉まり、タクシーは再び夜の街へと消え去った。


あの後、俺は首尾良く健二に“お持ち帰り”された。
元々同級生なので話を合わせるのは朝飯前だった。
二人で居酒屋を出る時、後ろを振り返ると、他のメンバーたちは目を丸くして開いた口がふさがらない様子だった。
まさか一番清楚でお嬢様な沙織ちゃんが自ら“お持ち帰り”されるとは夢にも思っていなかっただろう。


タクシーを降り、顔を上げると、そこには灰色のコンクリートの建物があった。
正面はシャッターで閉ざされており、屋根は高く、1.5階建てと言ったほうが正確だろう。
懐かしいなぁ。
高校時代はよく遊びに来てたもんだ。

健二の両親はこの家で塗装業をやっていた。
そのため壁に塗料の跡が残っていたり、周りにドラム缶が積んであったりする。
しかし、長引く不況で健二が高校を卒業すると同時に廃業し、田舎に戻った。
一方、健二は一旗あげると言って街を出て行った。

ということは、今住んでるのは健二だけか。
健二がなぜこの街に戻ってきたかはわからない。
ただ、故郷に錦を飾るような凱旋には思えなかった。


健二はカバンからジャラジャラと鍵の束を取り出すと、シャッター横の裏口の扉を開けた。

「どうぞ」

「おじゃまします」

俺はさも初めてのようにキョロキョロ辺りをうかがいながら中に入った。

健二は靴をポンポンと脱ぎ捨て中に入っていく。
俺も同じようにしたかったが、ブーツなので無理だ。
こういう時、女って不便だな。

俺は玄関に座り、ブーツのチャックを開き、黒く重いブーツから足を引き抜いた。
すると、むわっと蒸れた臭いがした。
お世辞にもそれはいい臭いとは言えなかった。
沙織ちゃんからこんな臭いがするなんてちょっと幻滅だな…
だが、沙織ちゃんしか味わえない味を吸ってると思うとちょっとうれしかった。


真っ暗な家の中を次々に電気を点けながら進んでいく健二の背中を追う。
歩くたびに床がミシミシと音を立てる。
床と黒タイツが直接こすれて心地良い。

廊下の先には居間があり、台所にはビール缶が逆さにして立てかけられていた。
たしかこの隣が健二の部屋だったはず…
記憶を辿っていると、ちょうど健二がそのドアを開けた。

そのまま中に入ると思いきや、健二はドアを開けたまま止まり、俺のほうを見ている。
くりっとした大きな目とにやけた口元がいたずらっ子のようで憎めなかった。
レディーファーストってことか。
たしかに健二って昔からかわいい女の子に弱いお調子者だったからなぁ。
俺は両手を股の前で合わせ、軽く頭を下げ、しおらしく中に入った。



中は8畳ほどの広さに、入って正面に白いシーツのベッドがあり、その奥の窓には青いカーテン。
入ってすぐ右には洋服掛けと鏡があり、壁にはギターやスケボーが掛けられていた。
ベッドの横には小さなテーブルがあり、ノートパソコンとテレビ、それに携帯の充電器や小物がジャラジャラと置かれていた。
床にはスポーツ新聞やフリーペーパーが散乱とまではいかないが、かなり乱雑に積まれていた。

「汚い部屋でごめんね」

「いえ、私男の人の部屋初めてで…」

なんて言ってみる。
初めてどころか、男の人の部屋に“住んで”るんだけどな。
俺は健二の顔がほころぶのを見逃さなかった。
ルミの体で言っても信憑性は低かっただろうが、女子校育ちの沙織ちゃんの体なら説得力あるだろう。


「じゃあ俺、シャワー浴びてくるから。自分の部屋だと思ってくつろいでて」

「ええ」

そう言って健二は部屋から出て行った。
健二の足音が遠ざかるのを確認すると、俺はその場にドスンと尻餅を付いた。
鏡には後ろに手をつき、股を大きく広げた、とてもお嬢様らしくない沙織ちゃんが映っている。

俺は髪をガリガリかきながら、もう一度部屋全体を見渡した。
ほんとに変わってないなぁ。
壁に掛かっているギターとスケボーも昔のまんまだし、変わったところといえば、テレビが薄くなってノートパソコンが増えたぐらいか。
ジーッと電球の音だけがかすかに響いている。

そういえば…
俺はベッドの下に手を突っ込んだ。
あった!!
そこには靴の空き箱に入った健二の秘蔵コレクションがあった。
へへっ、エロ本の隠し場所まで変わってなかったんだな。

俺はそれらを手に取り、パラパラとめくってみた。
半分以上が洋モノだった。
赤い口紅のブロンドの女が、ガーターベルト一枚でセクシーなポーズを取っている。

読み進めているうちに、女が鏡の前で手を突き、バックから男が攻めてる写真が多いことに気づいた。
なるほど、健二ってこういう体位が好きなのかぁ。
ふと、鏡を見てみる。
そこにはエロ本を広げている沙織ちゃんが映っていた。
よ~し、健二の願望をかなえてやるか。


と、遠くから足音が聞こえた。
やべっ!
俺は慌ててエロ本を直してをベッドの下に押し込んだ。
入れ違いで健二が入ってきた。

「おまたせ」

「えっ、ええ」

俺は笑ってごまかした。

健二は白いバスタオルを腰に巻き、手に持ったもう一枚のバスタオルでくしゃくしゃと頭をふいていた。
服を着てる時は気づかなかったが、意外に健二って胸板あるんだなぁ。
水も滴るいい男…というわけではないが、一瞬ドキッとした。

別に俺は元々男好きってわけじゃない。
男の時は俺も女のやわらかい肌が恋しくなる。
だが、今は俺がそのやわらかい肌の持ち主であり、そうすると男の大きくて固い肌が恋しくなるのだ。

前に一度納豆嫌いの女に乗り移ったことがある。
俺自身は納豆は嫌いじゃなく、むしろ好きなほうなのだが、その女の体で納豆を見たら「うっ」と来た。
つまり、俺自身の感情より体の生理的欲求や拒絶反応が勝ることがあるのだ。



「じゃあ、始めようか」

そう言って健二は俺をやさしくベッドに押し倒した。

「きゃっ!?」

目の前に健二が迫る。
健二の体がいつもより大きく見えた。
それに比べたら俺の細い腕では絶対に勝てないと思った。
今ならまな板の上の鯉の気持ちがわかる気がする…

「あっ」

健二は俺のカーディガンを脱がしにかかった。
ゆっくりとピンク色のカーディガンが俺の体からはがれていく。
不思議と嫌な感じはしなかった。
俺は流れに身を任せた。
次に健二は俺のワンピースの肩紐をずらし、ネックレスの留め具を外した。
最後に健二がワンピースを脱がすと、俺はブラに、ショーツと黒タイツだけになった。


「きれいな体だね」

と健二は言った。
俺もそう思う。
服という余分な物が消えた結果、俺は自分でも沙織ちゃんのスタイルの良さを認識した。

健二は俺のブラを外そうとした。
俺は頭と足に力を入れ、少し背中を浮かせ、外しやすくした。
パチッと音がし、ホックが外れ、乳房が外気にさらされた。

俺はとっさに手で胸を隠していた。
これは考えてやったわけでなく、なんだか無性に恥ずかしかったからだ。
健二は俺の胸を熱い視線で見つめている。
まるで念願の宝を目の前にした海賊のようだ。
なんだかそんなに熱く見られると、見せたくなる。

健二は俺の手首をつかんだ。
俺も抵抗しなかった。
あごを引き、自分の胸を見ると、そこにはピンク色の乳首の沙織ちゃんの胸の山が二つあった。

健二は俺のくびれに手を回した。

「あっ」

大きくてゴツゴツした男の手。
それがだんだん上へ上へ、芋虫のように動きながら胸へ這い上がってくる。
そしてついにそれは俺の胸に触れた。

「あんっ!」

自分でも予期しなかった、女の喘ぎ声が口から漏れた。
男の時なら「わっ!」と言ってたかもしれない。
だが、これは演技でなく、本当に無意識に出た。
健二は俺の胸をつかみ、ゆっくりともみ始めた。

「ふぁ…」

俺の口から甘い吐息が漏れた。
思わず脇をしめ、身をよじる。
健二は中指と人差し指で俺の乳房の周りを円を描くようになでる。

「あっあっ」

俺はシーツをつかみ、必死に快感に耐えた。
服を脱がすとこからの一連の動作といい、こいつ手慣れてるな。
きっとそういうお店に通ってるんだろう。
一方、沙織ちゃんの体は慣れていないのでどこを触られても反応した。

「はっ…ひっ…健二さん!!」

「沙織ちゃん」

お互いの名前を呼び合う。
まるでカップルのようだ。


一旦、健二の手が止まった。
次に何をするのかと思いきや、突然俺の乳首をつまんだ。

「あんっ!!」

俺は大きくのけぞった。
ピンク色の乳首が健二の指によってピッと引き伸ばされている。
この瞬間的快感は高かった。
男の体で例えるなら、女性のしなやかな指で亀頭をつままれてると言えばいいだろうか…
しかも一つじゃない、二つだ。


今度は俺の乳首の上で健二の舌が踊り始めた。
俺のあごのすぐ下には健二の頭がある。
ペチャペチャと動く舌は気色悪かったが、気持ちよかった。
相反する二つの感情が俺を襲う。

「ひぅ…ぁっ!」

その間、俺は肉食動物に襲われた獲物のように声をあげることしかできなかった。
沙織ちゃんの乳首は赤くなり、ピンッと硬くなっていた。


やっと舌が止まった。
健二は体を起こすと、俺の腰に両手を当て、ショーツごとタイツを脱がし始めた。
黒い足が次第に白くなり、沙織ちゃんの生脚が初披露になる。
最後の砦を取られてしまえば、あとは沙織ちゃんの秘密の花園がオープンになる。
なんとも恥ずかしくなって、俺は無意識のうちに内股になっていた。

健二はなで回すように俺の裸を見ている。
ただでさえ大きい目はさらに大きくなり、鼻の穴は広がっていた。
だが、本人はそんな様子は悟られまいと口をキュッと閉めているところが滑稽だった。


「ま、待って!!」

俺はそう叫ぶと、起き上がり、部屋の鏡の前に移動した。
そして、鏡の両側に手をつき、ツンとおしりを突き出した。
エロ本にあった健二の好きな体勢だ。

「ここでお願い…」

ベッドサイドに腰掛けていた健二は、目を丸くしながら俺が何をするのか見ていたが、少し間をおいて「あぁ」と返事した。
昔から健二はこうだ。
口は軽くて願望は簡単に言うくせに、実際それが叶うのを目の当たりにすると、急に誰よりも冷静になる。
そんな妙に冷めたところを持っていた。

鏡越しに健二がベッドサイドから立ち上がる姿が見えた。
鏡には髪は少し乱れ、裸になった俺、沙織ちゃんがいる。
なんだか緊張する…
実際ここまで誘ったのは俺だが、やはり想像と現実は違う。
俺はギュッと目をつぶった。
背後でピタッと足音が止まった。

腰に大きな手の感触。
健二の指がしっかりと俺の腰を固定した。

「沙織ちゃん行くよ」

健二はそうつぶやくと、自らの巨根を俺の中に入れ始めた。
ギュッという痛み。
それはちょうど腹に拳を押し当てられ、押し上げられるような感覚だった。
本当にこんな小さな膣に健二のブツが入るのか?

「あぁぁっっ!!」

俺は思わず声をあげた。
健二のアソコが遠慮無くズブズブと入ってくる。
い、息ができない!
腹の下からこみあげてくる圧迫感。
本当に息ができない!
吐きそうで吐けない時のような苦しみ。
狭いところに大きな物が無理矢理込められていくようで…

「かはっ!」

俺はようやく息を吐き出した。
目の前の鏡には口を上にあげ、苦しそうな沙織ちゃんの姿が映っている。
もうそこにお嬢様らしさなんてない。

その背後では健二が真剣な顔つきで腰を動かしていた。

「あっ!あっ!」

健二のアソコが俺の中で激しくのたうち回る。

「あはぁん!はぁん!」

沙織ちゃんの喘ぎ声が部屋にこだまする。
その声は自分でもびっくりするぐらいAV嬢に似ていた。

犯されていると同時に自分が犯しているような倒錯。
羊を罠に掛けて狼に襲わせ、自分は羊の視点から見ているような気分。

「あぁっ!!」

健二の腰の動きが速くなった。
俺の中で健二のアソコがピストン運動している。
ぐちゃぐちゃにされる屈辱感と快感。
もはや俺自身が快感という悪魔に取り憑かれていた。

俺の膣はどんどん熱くなり、もはや自分でも感じているのがどこなのかわからないほど麻痺していた。
健二はまぶたを閉じ、唇を突き出し、「おっ、おっ」と快楽に酔っている。
健二のアソコもそろそろ限界だろう。


いや、待てよ…今中で出されたら…
さすがに中はまずい…
沙織ちゃんが妊娠してしまう可能性がある。

もしそうなったら、沙織ちゃんは俺に乗り移られている間の記憶がないから、下手したら健二は逮捕されてしまうかもしれない。合コンで俺たちが一緒に帰るのを目撃されているからごまかすのは難しいだろう。
さすがにそれじゃあシャレで済まされない・・・


「そ、外に出して!!」

俺は声を絞り出して叫んだ。

「ハァハァ…えっ?俺のこと嫌いなの?」

と健二。
何言ってるんだ、お前のためなのに…

「ち、違う!いいから外に!!」

俺はもう一度懇願した。

「俺、沙織ちゃんのこと愛してるよ」

ダ、ダメだ!全然通じてない!!
しかもあろうことか健二は腰の動きを速くした。

「あんっ!あぁぁんっ!!」

俺が感じてなくて不満足だと勘違いしてるのか!?
く、くそっ、こうなったら・・・


「俺だよ!安崎武志だよ!!」

俺はついに正体を明かした。

「えっ?安崎武志…? あぁ、高校の時の…ってなんで沙織ちゃんが知ってるんだ!?」

「だから俺が安崎武志なんだって!!」

健二はわけがわからず、困惑している。
逆の立場だったら俺もそうなってただろう。

「お前、ベッドの下に洋物のエロ本隠してるだろ!!」

「なぜそれを!?」

「だから俺が本人なんだって!!」

さすがに沙織ちゃんの豹変ぶりに何か感じたのか健二の動きが鈍くなった。
だが、快感が急に止まるわけじゃない。
もう俺も健二も限界だった。

「とにかく外に出せ!!」

「わかった!!」

健二は俺の腰をつかみ、抜き始めた。
だが、かなり奥まで入ってたようで一気には抜けない。
それに抜くときの摩擦で、ジンジンに熱くなった俺の膣が刺激された。


ビシュウウウゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!


間一髪、健二のチルドレンたちは俺の背中に放たれた。
背中にぐっちゃりとした感覚。
頭も体もぐちゃぐちゃだった。
俺はその場にへたり込んだ。
健二はベッドに大の字に倒れ、息をあげている。
そのまま一分くらい俺たちは息を整えた。


「で、一体どういうことだよ?」

大の字になったまま健二が切り出してきた。

「ハァハァ…あぁ、実は俺、幽体離脱できるんだ…ハァハァ」

「幽体離脱?体から出て透明人間みたいになれるってあれか?」

「おぅ、それだけじゃない。他人に憑依することもできる」

「じゃあまさか合コンの鼻っから…」

「あぁ。でも最初はルミに乗り移ってたんだ。途中でトイレに行った時に沙織ちゃんに乗り換えたんだ」

「どうりでうまく行き過ぎだと思ったぜ…」

「わりぃ。最初はちょっとからかうつもりだけだったんだけどな… ところでお前こっちに戻ってきてたのか…」

「あぁ、向こうで営業やってたんだが、結構ブラック企業でさ。ヘトヘトになって戻ってきたんだよ」

「そうか…」

お気楽そうに見えても、健二にもいろいろあったんだな…


「ふぅ」

健二は一息つくと体を起こし、俺をマジマジと見つめはじめた。

「な、なんだよ」

「へぇ~ お前が武志とは全然思えないなぁ」

「そりゃそうだろう。見た目は完全に沙織ちゃんだからな」

「これからどうすればいいんだ?」

「とりあえずタクシーを呼んでくれ。俺を沙織ちゃんの家まで送るんだ。沙織ちゃんが飲み過ぎてお前が介抱したということにするんだよ」

「なるほど」

健二が電話でタクシーを呼んでる間、俺は床に散らかった服を着始めた。
ショーツをはき、ブラを付けよう、ホックがなかなか留まらない。


「タクシー呼んだぞ」

「頼む、ホックを留めてくれ」

「あぁ、わかった」

健二はうれしそうに俺の背後に回り、ホックを留めた。


次に黒タイツを履こうとしたが、健二が強引に脱がせようとしたせいか、何カ所か伝線していた。
さすがにこれじゃまずいな…
俺は健二に頼んで近所のコンビニに買いに行かせた。

その間にワンピースとカーディガンを着込み、鏡の前に立って乱れた髪を部屋にあった健二のクシで整え、服のしわを伸ばした。
忘れ物はないか確認した後、沙織ちゃんの財布から学生証を探し、住所を調べた。

やがて健二が戻ってきた。
俺は健二から新しいタイツを受け取ると、包装から出して足に通した。

「この破れたのはどうすんだ?」

「あぁ、好きにしていいよ」

「マジか!?ラッキー♪」

そう言って健二は破れたタイツをクンクン嗅ぎだした。
まったく…

俺がはきおえたとほぼ同時に家の前に車が止まる音がした。
俺と健二は家を出る。
もう結構酔いは抜けていたが、わざと千鳥足で健二に支えられながらタクシーに乗った。
タクシーに乗ってる間、ずっと健二の肩に頭をのせて目を閉じていた。
なぜか無性に心地良かった。
健二は窓の外を見つめたまま。口にこそ出さなかったが、うれしそうだった。


やがて車は沙織ちゃんの家に着いた。
大きな木の門構えの立派な家だった。
門の前では着物を着た70代くらいの老女が心配そうな顔つきで立ってきた。
健二の肩を借りて車を降りると、その老女が心配そうに駆け寄ってきた。

「まあ、お嬢様…」

俺のことをお嬢様と呼ぶことは沙織ちゃんの祖母ではないだろう。
気弱そうな表情からしてお手伝いさんか何かか。

「大丈夫?沙織ちゃん?」

健二が問いかける。
もちろん演技だが。

「えぇ、ちょっと飲み過ぎたみたいで…。この方が助けてくださったんです…」

「まぁ、なんとお礼を申したら…」

「いえ、いいんです。じゃあ俺はこれで。あとはお願いします」

健二はそう言って、再びタクシーに乗って帰って行った。
一方、俺はお手伝いに支えられながら沙織ちゃんの部屋に帰った。
帰ったと言っても俺にとっては初めて入る部屋だが。

布団に入ると、すぐに眠気が襲ってきた。
よし、ここまで来れば大丈夫だな。
俺は沙織ちゃんの体から抜けた。

下を見ると、沙織ちゃんがスヤスヤと寝ていた。
おそらく明日の朝起きて、昨晩の記憶がないことに気づくだろう。
だけど、お手伝いさんから昨日自分が健二に助けられたと言っていたことを聞かされて、しぶしぶ納得するに違いない。


ふぅ、今日は長い一日だったなぁ。
最初はデート前の友子に乗り移って、次にその後輩の梨穂ちゃんに乗り移って、女子大のトイレでルミに乗り換えて、女性専用車両で痴漢して、最後は合コン会場で沙織ちゃんへと…
まるで一日が一年のような気分だ。
さて、俺も帰るか。
こうして、俺は沙織ちゃんの屋敷を後にした。









  一週間後…


俺は再び健二の玄関前に立っていた。
インターホンを押す。
ドアの向こうからドタバタと音がして、健二が出てきた。


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「ほら、お前の好きなAV女優に乗り移ってやったぜ」

「おおぅ!待ってたぜっ!!」

健二は鼻をふくらませ、大喜びしてる。

「この体探すの大変だったんだぜ~ 会社の場所わかんなかったし。ま、関連会社の美人秘書の乗り移ってなんとか見つけたけどな」

「おぉ!サンキュサンキュ!マジ感謝!! あとでサインもしてくれよ!!」

そう行って健二はDVDを取りだした。
ジャケットには今の俺の姿が映っている。
まるで手鏡を見ているようだ…

「俺のサインになるけど…いいのか?」

「ま、とにかく中に入れよ!早速やろうぜ!!」



(『憑依してGO!』 おしまい)


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