短編『ひょうイれかわり』



(イラストは加工可能なフリーイラスト集から使いました)






俺の名前は拓也(24)。
どこにでもいる平凡なサラリーマンだ。

夜のひっそりと静まりかえったオフィス。
残業を終えた俺は、カバンに書類を詰め、帰る支度をしていた。


「なんだか今日はゴキゲンだなぁ」

隣の席の同僚の泰司が話しかけてきた。

「おっ、わかるか?実は明日、叔父さんのパーティーなんだ」

俺の叔父さんはちょっとしたピアニストで、年に一回日本公演の後にパーティーを開く。
俺も親族ということで、そのパーティーには毎年招待されている。
そのパーティーには有名企業や政治家などの令嬢も来ていて、美女の宝庫なのだ!!


「タキシードも新調したし、今年こそかわいい子ガッポガッポだぜ!!」

俺は拳を握って高らかに宣言した。

「あれ?お前去年もそんなこと言ってなかったけ?それに今月車検って言ってなかったけ?」

横から泰司が水を差す。

「いいんだよ。逆玉すれば元以上取れるんだからな」

「ま、せいぜいがんばれよ」

こうして俺たちは別れた。






――翌日

とあるホテル一階の大ホール。
豪華なシャンデリアの照明の下、タキシードを着た男たちとドレスを着た女たちがあふれている。
テーブルの上には一流シェフの作った料理が並んでいる。
俺はその会場の片隅で立ち尽くしていた。

「な、なんでだ・・・」

自分でも顔がひきつっているのがわかる。
スーツも白いタキシードに新調し、胸に赤い薔薇も刺し、会話が盛り上がるように努めたのに・・・
俺の周りから女の子が一人もいなくなっていた・・・

最初は女の子たちともいろいろ話していたのが、気がつくと一人また一人と去っていき、とうとう俺一人会場の片隅にポツンと残された。
叔父さんにいい子を紹介してもらおうと思ったが、叔父さんはワイン片手に偉そうな人たちと談笑していて、とても話し掛けられる雰囲気ではなかった。

会場にはこんなにかわいい子がたくさんいるのに一人も釣れないなんて・・・
まるで釣り堀で釣れない男じゃないか・・・
欲求不満で俺の股間は暴発寸前だった。


「あのー すいません」

とその時、後ろから声が聞こえた。
振り返ると、そこにはとびっきりの美女がいた。


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白と青のドレスに流れるような髪。
透き通るような白い肌は染み一つなく、見ただけですべすべだとわかる。
右手にはハンドバッグを持ち、左手のひとさし指を唇に当て、なんとも言えない表情で俺を見ていた。
まるで神話の世界から飛び出してきた女神かと思うほど美しかった。

「は、はい、なんでしょう?」

俺は慌ててネクタイの位置を整え、対美女用必殺すまし顔を作った。
するとどうしたことか。
いきなり目の前の美女が「プッ、ククク・・・」と笑いを堪え始めたのである。
俺の顔に何か付いてるのか!?
初対面の人を見て笑うなんて、見かけによらず失礼な人だなぁ。
と俺が思っていると、


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「俺だよ、俺」

といきなり美女が汚い言葉遣いになった。

「へ・・・?」

突然の豹変に戸惑う。
美女は口元をニヤリと歪ませて、ニンマリとした目つきで俺を見ている。

「ま、まさか泰司か!!」

「その通り♪」

泰司は一ヶ月前に偶然入ったリサイクルショップで古めかしいラジオのような装置を買ったという。
しかし、その装置はただのガラクタではなく、黒い部分を他人に向けて青いボタンを押すと、30分だけその人に乗り移ることができ、赤いボタンを押すと30分だけその人と入れ替わることができるという不思議な装置だったのだ。
俺も最初は冗談かと思ったが、実際泰司が一週間前にOLの上田さんに憑依しているところを見て、冗談じゃないと確信した。


「な、なんでお前がここにいるんだよ!!」

俺は泰司を指さして声をあげた。

「いやぁ、お前が昨日調子に乗ってたからさ、心配になって」

「余計なお世話だ!!」

くっ、くっそ~
恥ずかしいところを見られた羞恥心で、自分でも顔が火照って赤くなるのがわかる。


「それにしてもお前、胸に赤い薔薇ってギャグか?それにお前と女の子たちの会話聞いてたけど、お前自分の話ばっかりで、そりゃ女の子たちも逃げていくわな」

泰司が美声でズケズケと物を言う。

「テ、テメェ!」

男であれば一発小突いていたところだが、女には手を出しちゃいけないという本能が俺を静止させた。


「とっとと帰れ!!」

「まあまあ、落ち着けよ。そんな大声出すと周りが見てるぜ」

慌てて周囲をキョロキョロすると、近くの数人が俺たちのほうを見ていた。
やっべ!
悪いのは泰司でも、状況だけ見れば俺が美女に罵声を浴びせてるように見える。
ク、クソ・・・


「ま、お詫びといっちゃなんだが、さすがにそのままじゃまずいから、俺が処理してやるぜ」

そう言って泰司は下に視線を向けた。
視線の先には俺のモッコリふくらんだズボンの股間があった。

「ま、マジか!?」

「あぁ、俺についてこい」


そう言うと泰司はスタスタと歩き出した。
うまく優雅に周りにバレないように気を遣って女らしく歩いてるのがわかる。
後ろ姿もきれいだ・・・

会場の外れに行くと、長い廊下があり、右側にはトイレがあった。
だが、泰司はトイレを通り過ぎ、さらに奥へと進んでいく。
お、おい、どこまで行くんだよ!?

と、思っていたら、泰司は廊下の突き当たりにある扉を重そうに開いた。
泰司に続き、中に入る。
外と違い、中は薄暗かった。
弱い電球がジーッと音を立てながら光っている。
緑色の非常口のマークが精彩を放っている。
そこは非常階段だった。

「ぬおっ!?」

床に誰か倒れていて死体かとビビったが、それは意識を失ってるいわば泰司の抜け殻だった。


「一体どういうことなんだよ?」

なにがなんだかわからなかった俺は泰司に説明を求めた。
泰司が俺のほうを振り返る。
ふわっとスカートが舞い、いい匂いが漂ってきた。
そのしぐさがセクシーで、俺の股間はさらに盛り上がった。

「お前があんまりかわいい子がパーティって言うからさ、どんなパーティーか気になって裏口から侵入したんだよ」

「よくバレなかったな」

「俺、大学時代にホテルでバイトしててさ、その制服がまだタンスに眠っていたのさ」

たしかに泰司の抜け殻が着ているバーテンダーみたいな制服は、細かい柄やワッペンは違うが、パッと見は本物の従業員と見分けが付かなかった。

泰司は自分の抜け殻に歩み寄ると、しゃがんでそのほっぺにキスをした。

「あ、ずるいぞ!」

「いいだろ?“俺”が誰にキスしようと勝手だろ?」

そう言って泰司はまたニンマリと微笑んだ。

「ぐぬぬ・・・」


「んで、この非常階段の扉の隙間から誰に乗り移ろうか品定めしてたんだ」

「でも、よくそんな短い時間で選べたな」

「簡単なことさ。トイレに入った女は必ずトイレから“出る”だろ?だから入る時に品定めして、出るときに装置を使ったんだよ」

「なるほどな、だいたい事情はわかった。んで、一体その子は誰なんだ?」

俺は改めて泰司の体を足元から頭のてっぺんまで眺めた。

「あぁ、千代佳さんって言うんだ。○×航空の社長令嬢らしい」

「!!」

○×航空といえば誰もが知ってる有名航空会社だ。
まさか娘の体がハイジャックされるとは夢にも思わなかっただろう。

無茶しやがって、というのが俺の率直な感想だった。
俺に一言声を掛けてもらえば叔父さんに頼んで入れてもらうこともできたかもしれないのに・・・
ま、もうこうなっては後の祭りだが。



「そういえば、時間は大丈夫なのか?」

装置を使って他人に乗り移れる時間は30分。
それを超えると強制的に元の体に戻されてしまう。

「えっと・・・」

泰司が自分の左手首を見た。
だが、腕時計がないことに気づき、俺に時間を聞いてきた。
俺は自分の腕時計を見た。

「1時35分だ」

「俺がスイッチを入れたのが1時20分頃だったから・・・大丈夫、まだ15分くらいある」

「よし、なら大丈夫だな」


安全確認すると、俺は泰司に近づき、頬をなでた。
乳白色の肌はまるで赤ん坊の肌のようにつるつるすべすべしていた。

「お、おい」

泰司は嫌がる猫のように目を細めた。
俺はそんなことは気にせずほっぺを両手で交互になで回した。

本当ならば触ることすらできない高嶺の花を自由に触れる・・・
憑依ってなんて素晴らしい能力なんだ・・・
憑依への賛辞と共にちょっぴり泰司に感謝した。

遠くにいる時は気づかなかったが、近づくと千代佳さんの髪や胸元からフローラルな薔薇みたいな匂いが流れてくる。
ゴクリと思わず生唾を飲み込む。


俺は頬に当てていた手をするりと下ろし、千代佳さんの胸元に当てた。

「ちょ・・・服を破いたり脱がしたりするのはダメだからな」

泰司は釘を刺す。

「わかってるって」

泰司は顔をしかめながらも拒否はしていない。
俺はさっきからかってくれた仕返しとばかりに泰司の胸をもみ始めた。

「あっ、ふぅん・・・」

淡いピンクの口紅で彩られたツヤツヤの唇から、千代佳さんの吐息が漏れ、俺の顔にかかる。
ドレスの下はコルセットのようなものを着ているのだろうか?
ブラと違い、ちょっと固かった。

やさしく、時に激しく、緩急をつけながらもみ続ける。

「あ、はぁん・・・」

泰司は壁に背中をつけ、両手を顔の横にあげ、ひたすら喘ぎ声をあげている。
毛一本ない千代佳さんの脇が見えたので、ついでにくすぐってやった。

「あんっ!ちょ、おま、そこは反則www」

「いいだろ?俺がどこを触ろうが俺の勝手なんだから」


俺はそのまま彼女を抱き寄せ、唇を奪った。
やわらかい感触。

「ん・・・んん!?」

泰司は最初は目を白黒させて驚いていたが、俺が舌を入れると絡ませてきた。
ひょっとしてこいつその気があるんじゃないか?というぐらいに。
もはや中身が泰司ということはどうでもよかった。
こんな絶品を味わってしまうと、肉欲が勝ってしまう。
俺たちはそのまましばらく熱い口づけを楽しんだ。


口を離すと、俺の唇から千代佳さんの口紅の匂いがした。
泰司は口惜しかったのか「んんっ」と言いながら、唇をキスの形にしながらもだえていた。

俺は泰司を押し倒すと、ズボンのチャックを開き、すでに大きくなっているアソ
コを取り出した。
そしてそれを泰司の胸の谷間にドレスの上からこすりつけた。

「うげっ」

千代佳さんの美しい顔が急に青ざめる。

胸の部分は薔薇の模様に彩られたクシュクシュした生地で、そこに俺のアソコがこすりつけられ、さらに動くたびに千代佳さんの首に巻き付けられているスカーフが俺のアソコの上部をなでて、なんとも言えない気持ちになった。

「はぁはぁ・・・これマジやばい・・・」

どんどん俺のアソコは膨張していく。
すでに先からは液が少し漏れていた。

「ひぃ!」

泰司はあいかわらず歯ぎしりしながら気持ち悪がっている。

「そんなに気持ち悪がるなよ」

「バ、バカ!俺の立場にもなってみろ!目の前でグロテクスな棒が動いてるんだぜ!?」

千代佳さんの腰回りはとても華奢で、両手の手の平だけで背中まで回せそうだった。


「よ~し、そろそろ口でしてもらおうか」

そう言って俺は泰司の口元にチンポを突き出した。

「ちょ、ちょっと待った!俺はたしかに処理してやるとは言ったが、口でするとは一言も言ってないぜ」

「じゃあどうすんだよ?」

「手でシゴいてやるからとにかく放してくれよ」

俺は泰司の言う通り、泰司の体を解放した。


「ふぅ・・・」

泰司は立ち上がると、胸元をひっぱり、ずれたドレスを元に戻した。

「早くしてくれよ。早くしないと時間が来ちゃうぜ」

俺は腕時計を見た。
残り7分だ。

「わかった、わかった」

そう言うと、泰司は自分のドレスのスカートの前の部分を絞り、アヒルみたいによちよち歩きで近づいてきた。
白いハイヒールでよちよち歩きする姿が妙にかわいかった。

「おっ」

そして、絞った部分を俺のチンポに被せた。
そのままシゴき始める。
ただでさえ、高級ドレスの裏地はサテンみたいにスベスベしてて気持ちいいのに、それを千代佳さんが華奢な手でシゴいてくれている。

泰司にとっては俺のチンポを直接見たり触ったりする必要がなくいいのだろう。
だが、もうそんなことどうでもいいぐらい気持ちよかった。
ゆっくりとスベスベした生地がリズムよく俺のアソコをシゴいてる。

「ああっ、これは気持ち良すぎる・・・」

俺のチンポの先には千代佳さんのショーツがあると思うとさらに興奮は高まった。

・・・俺のアソコが・・・アァッ!!

ついに俺の先っぽから白いネバネバした液が発射された。

「ハァハァ・・・」

「ったく、こんなに出しやがって」

泰司が悪態をつきながら、自分の体に付かないようにスカートのすそを絞ったま
まガニ股で移動し、壁に液をこすりつけた。
こいつ・・・自分の体に飛ばされないようにという意味もあったのか・・・
姑息なやつだと思ったが、今はもうあふれる快感に酔っていてどうでもよかった。


「さぁ、もう十分楽しんだだろう」

泰司がハンドバックからティッシュを取り出し、自分のスカートをめくりながら裏地についた液を拭いている。
こちらからはかわいいリボンがついた純白の千代佳さんのショーツが丸見えだ。
せっかくのこんなシチュエーション・・・このままで終わらせるのはもったいな
い・・・


「ククク・・・」

「!?」

俺は強引に泰司の頭を押さえ込み、目の前にひざまづかせた。
突然の出来事に驚いている泰司なんてお構いなしに、アソコを口の中に突っ込んだ。

「やっぱ口でしてもらわないとな。ククク・・・」

泰司の頭を押さえながら笑う。

「ハァクフォクフォヒガゥボォ!!」

「約束が違うぞ!!」と抗議してるんだろう。
だが、もうマウントポジションに入ってしまえばこっちのものだ。
口はチンポでしっかりふさいでるし、頭は両手で押さえ込んでる上、男の俺と、箸より重い物を持ったことのないようなお嬢様の千代佳さんでは力の差は歴然。
中身が泰司だろうが、絶対逃げられないだろう。

「ンッンンッ!!」

泰司は目を閉じて涙目になりながら必死にもがいていた。
そんな顔もかわいかった。

「おいおい、ちゃんと口を動かして気持ちよくしてくれよ」

上から駄々をこねる。
だが、その時気づいた。
泰司はただ闇雲にもがいていたのではなく、片手で落ちていたハンドバックを漁っていたのである。
泰司はハンドバックから何かを取り出し、俺に向けた。

「!?」

それは例の装置だった。

ピッ

泰司が赤いボタンを押した。
すると次の瞬間、グルンッと視界が反転し、俺はなぜか地面にひざまづいていた。


「ンンッ!?」

目の前には白いタキシードのズボンが見える。
そして俺の口の中はそこから伸びる生温かいモノで塞がれていた。
俺は一瞬で状況を把握した。

泰司が装置の赤いボタン、すなわち入れ替わり機能を使って、俺たちの心を入れ替えたのである。
俺は顔を上げようとしたが、頭を強く押さえられできなかった。
しょうがないので目だけで上を見上げる。

すると、そこにはニヤリと微笑む“俺”がいた。

「お前が無理矢理するからいけないんだぜ」

“俺”の顔をした泰司が勝ち誇ったように微笑む。
他人の体で自分の声を聞くのは、まるで録音した自分の声を聞くようで、気色悪かった。

「フ、フソッ(ク、クソッ!)」

俺は脱出を試みようとしたが、この体勢から逃げるのは無理だってことは、さっきまで押さえていた自分が一番よくわかっていた。

ならば・・・!

俺は手探りで床に装置が落ちてないか探した。

「お探しの物はこれかな?」

泰司の声がして見上げると、右手に装置が握られていた。
し、しまった!!
頬を一筋の汗がしたたり落ちるのを感じる。
泰司は余裕の表情で装置の胸ポケットにしまった。


「さ~て、さっきのセリフそっくりそのまま返してやるよ。おいおい、ちゃんと口を動かして気持ちよくしてくれよ♪」

泰司が俺の声を使っておちゃらけて言うので憎さ倍増だった。
思わず、口に入ってるモノを噛みちぎってやろうかと思ったが、よく考えたらそれは俺のチンポ。
結局、逃げることも抵抗することもできず、途方もない絶望感を覚えた。
レイプされる女の子ってこんな気持ちなのだろうか。


「ほらほら♪」

泰司が俺の頭を揺らしながら挑発する。
俺は上目遣いでにらみつけながら、口を動かし始めた。

「俺が泰司にフェラしてる」って考えるから気持ち悪いんだ。
ここは発想の転換。
「俺が千代佳さんにフェラしてもらってる」って考えればいいんだ。
事実、精神的には前者で、肉体的には後者で間違いないんだし。

そう考えると、だいぶ楽になった。
俺の口に入ってるのは俺のチンポ。
舌の腹で亀頭を攻める。

「おっ、いいね~」

泰司が上から茶化す。
もうこいつのことなんてどうでもいい。
元に戻ったらぶっ飛ばしてやる。

口に入ってるのはちくわと思えばいい。
小さい頃、口にちくわをくわえて忍者ごっこしていたのと同じだ。
そう思うと、もう迷いなく口を動かせた。

「おっ、ヤバッ、出るっ!!」

ズピュピュ!!

「!!」

俺ののど元に熱いモノが流れ込んできた。
どんな感触が表すのは難しいが、強いて言うなら誤ってはみがき粉を飲み込んだ時の感触に似ていた。

俺の頭を押さえる泰司の手が弱まったので、俺は口からチンポを抜いて、後ろに尻餅をついた。
その時、チンポの先に残っていた液がいくらか俺の顔に飛んできた。

「げほっ げほっ」

俺は蒸せた呼吸を整えた。
口の中はまだネバネバする。
吐き出そうか飲み込もうか迷った。
飲み込むのは気色悪いが、飲み込めば「俺が千代佳さんに飲ま込ませた」ことになる。

そんなことを考えていたら、いきなり目の前の俺の体が、俺に向かってバタンと倒れてきた。

「お、おもっ!」

俺ってこんなに重かったっけ?
いや、俺が軽すぎるのか・・・


俺の体は完全に伸びていた。

「おい!このくらいで気絶すんなよ!!」

俺はスイカの中身が詰まってるか調べる時のように、俺のスカートの股の間に倒れてきた泰司の頭をポカポカと叩いた。

すると、ゆっくりと泰司が目を開いた。
自分の顔をこうして間近で見るっていうのも変な感じだ。

「ほら、重いからさっさとどいてくれよ」

泰司は俺の顔でまばたきをしばかせ、ポカ~ンとしていた。
その様子が少女漫画の主人公みたいで気持ち悪かった。


「どうして・・・私がもう一人いるの・・・?」

「へ・・・?」

泰司は俺の顔をまじまじと見つめながら変なことを言い放った。
「私がもう一人いる」???
ま、まさか!!


「きゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」

気づいた時にはもう遅かった。
目の前の俺の体が女みたいに体をくねらせながら悲鳴を上げていたのである。
そう、青いボタンの効果が時間切れになったんだ!!


「なんですかこれは!?」

俺の体が露わになった自分のチンポを両手で握りながら、引き抜こうとしてる。
だが当然抜けるはずもなく・・・


「きゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」

千代佳さんがまた悲鳴をあげた。
俺は状況の深刻さを理解した。
この場所は会場から離れてるからまだ気づかれてないと思うが、このまま千代佳さんをほっておけばいずれ誰かが異変に気づき、警備員が飛んでくる。
そうなれば、どう見てもチンポ丸出しの俺の体は「変質者」として捕まってしまうだろう。

「こ、これには事情があって!!」

俺は必死に弁明しようとしたが、錯乱状態になった千代佳さんは、

「あなた誰なんですか?いやあああぁぁぁっっっ!!!」

と混乱を増すばかりだ。

30分経てば入れ替わりの効果は自動的に切れるが、とてもそれまで抑えられそうにない。
とにかく、口だけはふさがないと・・・

俺はとっさに首に巻いてるスカーフを外し、千代佳さんに向かって行った。
飛びかかるつもりはなかったのだが、履き慣れないハイヒールのせいで転んでしまい、そのまま飛びかかる格好になってしまった。

俺はスカーフを彼女の口に巻き付けた。

「んんっ!?」

男のように勇ましく巻き付ける女と、女のようにクネクネ身をよじる男。
しかもそれが自分の姿なので滑稽だった。
これがコント番組だったら爆笑していただろう。

目の前に俺の後頭部が見える。
その横から何か光る物が見えた。
泰司がさっき胸ポケットに入れた装置だ!
あれさえあれば・・・!!

俺は白い手袋に包まれた指を伸ばした。
あと、ちょっと・・・あと数cm・・・


「いやあああぁぁぁっっっ!!!」

あとちょっとというところで、俺は階段まで吹き飛ばされた。

「いっつー・・・」

なんて力だ・・・
とても女の力じゃかなわない・・・


恐怖におびえた千代佳さんは非常ドアの扉に手を掛けた。
それはまずい!非常にまずい!!
錯乱した彼女がフルチンで出れば、会場はパニックになるだろう。
そんなことになったら叔父さんにまで迷惑がかかっちまう・・・


その時だった。
何者かがすごい勢いで、千代佳さんの頭を打った。
そのまま扉の前で気を失ってしまう俺の体。
突然の出来事と照明が暗いせいでわからなかったが、よく見てみるとそれはモップを持った泰司だった。


「ハァハァ・・・」

息をあげながら血走った目で倒れた俺の体を見ている。

「泰司!!」

俺はとっさに声をあげた。
泰司は千代佳さんが完全に気絶しているのを確認すると、ようやく落ち着きを取り戻した。


「ふぅ、危なかったぜ」

泰司が額の汗をぬぐう。
憑依効果が解け、自分の体に戻った泰司が、間一髪のところで助けてくれたのである。


「ったく、ヒヤヒヤさせんなよ」

「あぁ、俺が悪かった」

俺は素直に謝った。
元はといえば、俺が強引にフェラさせようとしたのがいけなかった。

「でも、どうしよう・・・俺、千代佳さんに顔見られちゃったよ・・・」

「大丈夫、千代佳さんが見た顔は誰の顔だ?」

「あっ、そっか」

千代佳さんが見たのは今の俺の顔。
すなわち、自分自身の顔。
一方、千代佳さんは自分の顔は見ていない。
つまり、俺の顔は見られていない。


とにかく一刻も早く事態を収束させなければいけない点で俺たちは共通だった。
泰司は気絶した千代佳さんの胸ポケットから装置を取り出す。
その間に俺は乱れた髪やドレスを整え、顔に飛んだ液をハンカチでぬぐった。

「ほら」

泰司が装置を俺に手渡した。
俺はそれを持って倒れている自分の体に向かって赤いボタンを押した。
再び視界が反転する。


「いってー!!」

自分の体に戻って一番最初に感じたのは頭の痛みだった。
触ってみるとたんこぶができていた。
後ろを振り向くと、気を失った千代佳さんを泰司がキャッチし、ゆっくりと床に寝かせていた。

よし、これで全員元の体に戻った。
おそらく1分もしないうちに千代佳さんは意識を取り戻すだろう。
俺と泰司は急いで非常階段から出た。

おそらく意識を取り戻した千代佳さんは自分が夢を見ていたと思うに違いない。
なにせ自分が男になっていたんだから。

会場に戻り、叔父さんのほうを見ると、あいかわらず偉い人たちと談笑していた。
今俺がここで帰っても気づかれないだろう。
叔父さんには悪いが、俺は泰司と一緒にそそくさとホテルを後にした。





――翌日

会社の昼下がり。

「ふわぁぁ」

泰司があくびを噛み殺しながら背伸びをした。

「昨日は惜しかったなぁ。せっかくお前の屈辱的な顔が見れそうだったのに」

「テメェ!全然反省してないな!」

泰司は俺の口の中に放ったとこまでは覚えているが、顔射したとこまでは覚えてないらしい。

「まぁまぁ、落ちつけよ」

泰司が横に目配せした。
目配せしたほうを見てみると、新人の子がエクセル相手に格闘していた。


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「あの子、今夜は残業らしい。“俺たち”で手伝ってやるか」

「ったく・・・お前ってやつは・・・」

突っ込みながらもニヤニヤが止まらなかった。


「もちろんお前があの子になってくれるんだろ?」

「何言ってんだ。お前のほうがパソコン得意だろ?」

「じゃあ、わからないあの子に俺がパソコンを教えてあげるって設定で」

「意味わからん」


こうして、時間は流れていく。
あぁ、早く夜にならないかなぁ。



(短編『ひょうイれかわり』おわり)

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