『ウェイトレスへようこそ!!(前編)』



僕の名前は木ノ下 求(もとむ)、19才。
3月に大学受験に失敗し、絶賛浪人中だ。

時は8月、うだるような暑さとセミの声が外界を支配する。
この町自慢の、美しい砂浜が広がる美崎海岸には、水着姿の観光客たちが楽しそうに夏休みを満喫していた。

「いいなぁ、こっちは夏季講習で毎日予備校通いだって言うのに…」

予備校はガンガンクーラーが効いて涼しいが、それがかえって予備校の窓から見える外界の人たちとは別世界にいるような気がして嫌だった。

「でも、いいんだ。今日はある“計画”をしたためてきたんだから♪」



美崎海岸に沿って道なりに進むと、左手にレストランが見えてきた。
白いペンキが真新しいログハウス風の建物。

「あったあった、Piaキャロット4号店だ♪」

このレストランは今月オープンしたばかりで、先週同じ予備校に通う悪友から「あそこのウェイトレスめっちゃかわいいぜ!!」と誘われ、しぶしぶ付き合わされた。
だが、悪友の言葉は本当だった。
新規オープンだから店内がきれいなのは当然のことながら、ウェイトレスの女の子たちや、彼女たちが着ている制服がめっちゃかわいくて、料理そっちのけで見とれてしまった。



僕は腕時計を見た。
時刻は平日の午後3時20分。
ガラス越しに店内を確認すると、思った通り客は少なかった。

「よし」

小さくガッツポーズして、入口へと続く階段を上がる。
そして、意を決してドアを開けた。


「いらっしゃいませー!お一人様ですか?」


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そこにはウェイトレスがいた。
わかりきってることとはいえ、一瞬胸がドクンッとした。
緑色の開放的な制服に身を包む姿は、まるで真夏に降り立った天使のようだった。


「え、えぇ、一人です」

「お煙草はお吸いになりますか?」

「い、いえ、吸いません」

「それではお席にご案内させていただきます」

元々女の子に対する耐性がないので、自分でもテンパっるのがわかる。
我ながら情けない。

ウェイトレスの後についていく。
目の前に彼女の背中と長い髪が見える。
す、すごい、後ろも大胆にはだけていて、本当にセクシーな制服だなぁ。


「こちらのお席にどうぞ」

僕は窓側の真ん中の席に案内された。
だが、ここでは“計画”を実行するにはちょっとめんどくさい。

「あ、あの、あっちの席でもいいですか?」

そう言って僕は窓側の一番端の席を指さした。

「えぇ、どうぞ」

改めて移動する。


そこは4人席のテーブルで、僕は奥の窓側のイスに座った。
すると、僕と一緒に真向かいのイスにウェイトレスが来た。
えっ!?と、内心驚いていると、彼女はイスにひざをつき、直射日光が当たらないように窓のブラインドを閉めてくれた。


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「おっ、おお」と思わず声を上げそうになるほど、彼女のつやつやの体が目の前に迫る。
下から見上げることになった胸、ふわりと揺れるフリルとスカート、ぷくっとふくらんだ絶対領域。
もし僕が胸ポケットに隠しカメラでも持っていたら、間違いなくシャッターを押していただろう。

だが、彼女は全然気にする様子もなく、ブラインドを閉め終わると、イスから降りて「ただいまメニューをお持ちいたしますので少々お待ちください」と言って去って行った。



彼女が去るのを確認すると、とりあえず額に流れる汗をぬぐった。
僕はずっと男子校育ちでこんな風に女の子と一対一で接することはほとんどなかった。
予備校にも女子はいるけど、みんな受験に必死なので、話すことはほとんどない。

だが、僕も男だ。
ずっと受験勉強していると、否応なしに溜まってくる。
やっぱりたまには息も股も抜かないと…


そ、そうだ、こんなこと考えている場合じゃない!
“計画”のために状況を分析しないと…

僕は店内を見渡した。
店内にいる客は僕を含めて3組。
僕から一番遠い席に30~40代ぐらいのスーツを着たサラリーマン二人組が座っていた。
そして、ちょうどそのサラリーマンたちの席と僕の席の中間ぐらいに、4、5才の娘を連れた30代ぐらいの母親がいた。

サラリーマンたちは商談中のようで、手元の資料を見ながら何かしゃべっていた。
一方、親子連れはなかなかじっとしない娘に母親が話しかけたりだっこしたりして手を焼いていた。
どちらも自分たちのことで頭が一杯で、こちらには全然気を止めてない様子だった。
これはなかなかいい状況だぞ。


すると、カツカツ…とこちらに向かってくる足音がした。
僕は慌てて姿勢を正し、平静を装った。
さっきのウェイトレスがメニューと水を運んできた。

「それでは、ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」


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そう言ってウェイトレスはきれいなお辞儀をして、再び従業員スペースへと去って行った。
そして今度はトレーにパフェを乗せて親子連れの席へと向かって行った。
メニューを広げて見るフリをしながら、目で後を追う。


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す、すごい!!絶妙なバランスでパフェを落とさないようにしつつ、優雅に歩いている。
自分にはとても真似できない。

「特製ジャンボパフェをお持ちしました♪」

そのまま流れるような動作でパフェをテーブルに置く。

「わぁ!お姉ちゃんありがとう!!」

小さな女の子が両手をあげて喜ぶ。
それを見てウェイトレスは「ウフフ♪」と微笑んだ。
その笑顔を見た瞬間、また胸がドキッと高鳴った。

年は僕とそんなに変わらない感じなのに、ほんと接客態度も言葉遣いもプロだなぁ。
未だ親のすねをかじって予備校に通ってる自分と比べると、ほんと情けなくなる…



よ、よし、今こそ“計画”を実行する絶好のチャンスだ!!
僕はカバンからビンを取り出した。
これは去年偶然手に入れた幽体離脱薬である。
これを飲むと、その名の通り、幽体離脱することができる。
僕はビンのふたを開け、錠剤を一つ取り出し、水と一緒に飲みこんだ。

二回ぐらい目の前がかすみ、風邪の時のような頭がボーッとなる感覚が来た。
体から力が抜けていく…というか、体に力が入らない…
首が据わらず、ぐるんぐるん揺れる。

やがて体がふわっと浮き上がり、自分のすぐ下に眠っている自分の姿が見えた。
よし、幽体離脱成功だ!
そのまま上昇し、天井付近から店内を見下ろしてみる。


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上から見ると状況がはっきりわかる。
小さな女の子がうれしそうにパフェをほおばっている。
サラリーマンたちはあいかわらず商談している。
さっきのウェイトレスが店内を歩いているのが見える。
僕は彼女の近くへと降下した。


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ほんとに後ろ姿もきれいだ。
あの背中に飛び込めばあのきれいな体が僕のモノになるんだ…
正直迷いはあった。
でも、せっかくここまで来たという思いもあった。
何より理性より倫理より、溜まっていた性欲のほうが勝っていた。


「あの子の背中…


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…にッ!!」


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カランッと床にトレイが落ちる音がした。

「あ、あれ…?」


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さっきまでとは全然違う体の感触。
手は小さく、胸はふくらみ、髪が重い。
それに、この服は……



「うっ…


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…うおぉ!!」


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(つづく)


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