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『恋人はお姉ちゃん!?(前編)』



僕の名前は武倉 純(23)。
とある美容室で働いている。

今日は土曜日で仕事は休みだったけど、僕の心は波立っていた。

「いよいよ明日か・・・」

それはこの前の月曜日のこと。
僕は思い切って同じ職場の憧れの先輩、樋浦みどりさんにデートを申し込んだ。
みどりさんは明るくて仕事ができて、見習い同然で店に入った僕に手取り足取り仕事を教えてくれた恩人でもある。
カットだけでなくメイクもこなせるすごい人なのだ。


puroto3.jpg


僕のデートの申し出を受けたみどりさんは、最初キョトンとしていたが、やがて頬を緩ませOKをくれた!
その時は跳び上がりたくなるほどうれしかった!!

そのデートの日がいよいよ明日・・・
明日はどんな服で行ったらいいんだろう・・・
僕は朝からタンスをひっくり返してソワソワしていた。

一応インターネットで検索したりデート情報誌を読んで勉強してみたけど、いまいち実感がわかない。
初デートって最初の印象が大事だからなぁ。
我ながら情けなくなる・・・


「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と言うけれど、よく考えたら僕はみどりさんのことをほとんどわかってなかった。
みどりさんは僕より二つ年上で、黒い髪を右側で結んでいて、青い澄んだ瞳がチャームポイントの、笑顔が素敵な美人。
いつも元気でやさしくて、ちょっぴりおっちょこちょいでお茶目なところもある。

・・・でもそんなこと同じ職場の人間なら誰でも知ってる。
僕が知りたいのは、どんなものが好きとか、休みの日はどうやって過ごしてるとか、そういうことだった。
でも、そういうことってよほど親しくならない限り、女の人からペラペラ話すことはないからなぁ。
女同士ならともかく・・・

女同士・・・?
そうだ!!

僕はとっさに時計を見た!
10時40分、まだ間に合う!!


この前、デートを申し込んだ時、「土曜日は11時から妹とショッピングに行く約束があるから日曜日にして」と手を合わせてお願いされた。
みどりさんには、まゆちゃんという高校生の妹がいて、前に休みの日に隣町の駅前で二人が待ち合わせしているのを見たことがある。
まゆちゃんならば、みどりさんのことをいろいろ知ることができる・・・

僕は机の引き出しから箱に入った砂糖を取り出した。
これは旅好きの友人がインドのおみやげにくれたものだ。
友人いわく、山奥の村を歩いていたら、老人の露天商がいて、「幽体離脱できる砂糖じゃよ」と言ってこの箱を差し出してきたらしい。
友人はうさんくさいと思ったが、露天商があまりにやせ細っていたので、寄付という感じでその砂糖を買ってあげたらしい。

見た目は茶色い角砂糖で、ところどころ黒ずんでいて、あまり清潔なイメージはしない。
友人は「幽体離脱なんてあるわけないよ」と笑いながらこの砂糖をくれたが、その老人が言ってることはウソじゃなかった。
箱の底に彫られているイラスト通りに、その砂糖を舌に置き、横になったら本当に幽体離脱できたのだ!!

ただし、何度か試してわかったことだけど、幽体離脱できるのは舌の上で砂糖が溶けるまでで、季節や気温によるけど、だいたい2~3時間ぐらい。
幽体離脱すると他人に乗り移ることができるけど、一度他人の体に入ると時間まで抜けられないことがわかった。

このようにすごい力を持った砂糖だけど、あまりに常識離れしていて怖かったし、副作用とかあったらどうしようと怖くて、ここしばらくはずっと机の引き出しにしまっていた。


でも、この砂糖を使えば・・・

まゆちゃんに乗り移ってみどりさんのことをいろいろ知ることができる・・・

知恵の実をすすめる蛇のように、心の中に邪心が頭をもたげてきた。
2~3時間とはいえ、何も罪のない少女のプライベートな時間を奪ってしまっていいのだろうか・・・
迷っている間にも時計の針は否応なく進む。


ついに僕は決心した。
ベッドに横になり、砂糖を舌に置く。
やがて意識が遠くなり、ふわっと自分の体が宙に浮いた。

「よし!」

僕は部屋の壁をすり抜けて外に出た。
あとは隣町までひとっ飛びだ!
新幹線の車窓のように、高速でビュンビュンと街並みが通り過ぎていく。

あっと言う間に僕は隣町の駅前に着いた。
この街はこの周辺では一番の繁華街があり、特に女性向けのデパートやお店が多く、土日となると大勢の人々でにぎわっていた。

「つきごろう!つきごろうをよろしくお願いします!!」

駅前では選挙カーに乗った政治家が演説をしていた。
が、通行人はほとんど気に止めていない。
駅には絶え間なく、人が出入りする。
こんなにたくさん人がいるのに、誰一人僕のことが見えてない。
当たり前か、もし見えていたら大騒ぎになって、翌日のスポーツ新聞の一面に「繁華街に宙に浮く人!魔術か幽霊か!?」という見出しが踊るからなぁ。


まずいまずい、こんなことを考えている場合じゃない。
早くまゆちゃんを探さないと・・・
駅前の時計を見ると10時50分だった。
早くまゆちゃんに乗り移らないと、みどりさんがやって来てしまう・・・

僕は空中を滑り降り、前にまゆちゃんを見かけた駅前のロータリーに移動した。

「いた!!」

思惑通り、そこにはまゆちゃんが立っていた。


yokou1.jpg


薄い緑のスカートに、淡いベージュのカーディガンを着て、携帯をいじっている。
茶色い髪は姉と同じく右側で結ばれ、白いリボンで留められていた。
黒いニーソックスと白いミュールに包まれたみずみずしい脚がまぶしい。
みどりさんが"きれいな"女性としたら、まゆちゃんには"かわいい"女の子という形容詞がピッタシだろう。

でも、本当にあんなかわいい子の体を借りていいんだろうか・・・
乗り移って無事に時間まであの子を演じ切れるだろうか・・・

幽体のままで観察できたら一番いいけれど、幽体だと砂糖の消費が激しく、長くても15分くらいで溶けてしまう。
かといってこのまま帰ったらせっかくの貴重な砂糖とチャンスを無駄にしてしまう・・・

ええい!しっかりしろ自分!!
こんなことだから優柔不断って言われるんだ!
みどりさんをリードするためにはもっと男らしくならなくっちゃ!!


「ごめん、体借りるよ!」

意を決した僕は、まゆちゃんの体に飛び込んだ。


yokou2.jpg


ガクンッと体が大きく揺れた。
目を開けると、そこにはさっきと変わらぬ人の波が流れていた。

人通りの喧騒が幽体の時はスピーカー越しのように聞こえたけど、今ははっきりと聞き取れる。
人通りに目を泳がせてみたが、誰も僕を怪しい目で見ていなかった。
憑依には無事成功したみたいだ。

自分の体を見下ろしてみると、僕が着ているのは当然ながらさっき見たまゆちゃんの物だった。
ひらひらしていて、腰にリボンがあったり、スカートのすそが透けていたり、かなりこそばゆい。

何が恥ずかしいって、みどりさんの服のような、元の自分の体より一回り二回り小さい服ならまだ自分の体で女装しているような気分があるのでそこまで恥ずかしくない。
しかし、まゆちゃんは女子高生でも小柄なほうなので、着ている服は中学生や小学生のサイズと大差なく、そういった子供用の服を自分が着て外にいるという感じがすごく恥ずかしかった。
もし元の体でこの服を着ていたらパンツ丸見えのワカメちゃん状態になっていただろう。


改めて自分の体を見ると、右手にはハートのストラップが付いたピンクの携帯を握られていた。
シンプルなシルバーの自分の携帯との違いに驚いてしまう。
画面には占いサイトの結果が出ていた。


【今日のあなたの運勢は・・・】

想いを寄せている人と近づけるチャンス!
意外な一面を見れちゃうかも!?

ラッキカラー:エメラルドグリーン


あはは、これが僕の占いだったらいいんだけどなぁ。
その時だった。

「ごめん~ 待った~?」

右前方から聞き覚えのある声が聞こえた。
視線を向けると、そこにはちょっと貴婦人風な青いブラウスとスカートを着た美人が僕に向かって手を振っていた。

「み、みどりさん!!」

「へっ・・・?」

みどりさんが口を半開きのまま静止してしまった。
し、しまった!“みどりさん”はまずいか!!
なんと呼べば・・・

“樋浦さん”というのはもっとまずい。
だって今は僕も“樋浦さん”だし・・・

となると、や、やっぱりこれしかないよな・・・


「お、お姉ちゃん・・・///」

僕は精一杯の勇気で声を絞り出した。
きっと僕の声はかわいいけど震えていて、顔は真っ赤になっていただろう。

「もう、どうしたのよ♪」

みどりさんがいつもの笑顔に戻った。
フゥ~ とりあえず怪しまれずに済んでよかった。

「もしかして待たされて怒ってる?」

「そ、そんな・・・!全然!!」

僕は両手を振って否定した。

「よ~し、じゃあまずごはんにしよっ!ごはん!!」

みどりさんは満面の笑顔で繁華街のほうに歩き出した。
今日のみどりさんはいつもよりかなりフランクだ。
それもそうか、みどりさんは僕のこと妹だって思ってるんだもんなぁ。
しかも年の離れた妹だからかわいくて仕方ないのだろう。

「う、うん」

僕はそう答えてみどりさんの後に続いて繁華街に向かった。



繁華街のメインストリートは人でにぎわっていた。
カップルも多いが、女の子の友達同士も多い。
だから僕ら二人も全然不自然じゃなかった。

とはいえ、僕にとっては仕事以外でみどりさんと一緒に歩いたのは初めてだった。
しかも、今は女同士、姉妹同士なのである。
こんな体験、普通の男の人じゃできないよ。

視線を隣に向けると、ちょうど僕の目線の高さに、みどりさんの横乳が見えた。
す、すごい、こんな至近距離にみどりさんの胸が・・・
みどりさんの胸元は結構大胆に開いていて、胸の谷間が見れた。

それに甘い香りも漂ってくる。
こんなスカートの中に風を感じながら好きな人と一緒に歩くなんて、すごく緊張するし恥ずかしかったけど、同時におしりが浮き上がりそうになるぐらいの幸せな気分になった。


それにしても、みどりさんはどこに入るつもりなんだろう?
僕の構想では、明日のデートではイタリアンパスタの店かオシャレなフランス料
理のお店に誘う予定。
そこでみどりさんと優雅な時間を過ごす。
そんなことを考えながら歩いていたらみどりさんが急に曲がった。

「着いた♪」

「へっ・・・?」

そこはよくある回転寿司店だった。
驚いてる僕を置いて、みどりさんは鼻歌交じりでズンズン入っていく。
僕も慌てて後を追いかけた。


店内は土曜のお昼時とあってそれなりに混んでいた。
店員に案内され、カウンター席に着いた。
体が小さくなってるし、履き慣れないミュールのため、イスに少しよじのぼる感じになった。
それからスカートが広がりそうなのでスカートを押さえながら座った。

そ、それにしてもまさか回転寿司とは・・・

みどりさんは手早くおしぼりで手を拭くと、「大将!カンパチ一丁!」といきなり注文し出した。
「へい!」と威勢のいい大将の返事が返ってきた。
か、かなり慣れている感じだ・・・

それからも、タイ、ブリ、アナゴ・・・とみどりさんは次々に取っていった。
結構渋いの食べるんだなぁ・・・
みどりさんは幸せそうにほおばっている。

「あ、あの・・・お姉ちゃん・・・」

「ん?なに?」

みどりさんはほおばりながら答えた。

「イタリア料理とかフランス料理とかは食べないの・・・?」

「えっ?だってあんなの見かけ倒しじゃん。ボリューム少ないから全然食べられないし。やっぱ寿司がサイコー!!」

そう言うと、みどりさんはうれしそうに次の皿に手を伸ばした。
お寿司たちが次々とピンク色の唇の中に吸い込まれていく。

「アハハ・・・ そうだよね・・・」

僕の笑顔はひきつっていたと思う。


何も食べないのは不自然なので、僕も何か食べようと思ったけれど、何を食べたらいいかわからなかったので、とりあえずエビ、タマゴと無難なところから食べ始めた。
だが、食べるペースはみどりさんの半分に満たない。
すると、みどりさんが僕の皿を見ながら言った。

「あれ?今日はイカ食べないの?」

イカかぁ。
イカはあんまり好きじゃないんだけどなぁ。
とはいえ、食べないのも不自然なので、苦笑いしながら渋々流れてくるイカを取って口に運んだ。

「!!」

う、うまい!!
こんなにおいしいイカを食べたのは初めてだ・・・
いや、ここのイカがおいしんじゃなくて、僕の味覚が変わったのか。
これなら何個でもいけそうだ♪




「ありがとうございました~」

店員に見送られ、僕たちは店を出た。
結局みどりさんは15皿、僕はイカ3皿を含む7皿食べた。

「食べた食べた♪」

みどりさんはポンポンとふくらんだお腹を叩きながら満足そうにしている。
これでつまようじをくわえていたら、完全にオッサンだ。

みどりさんは普段から陽気なところがあるからすごい意外ってわけじゃないけど、こんな素のみどりさんを見たのは間違いなく初めてだった。
ちなみにお代はみどりさん持ちだったので、女の人におごってもらったのも初めてかも・・・


でも、よかった。
もしまゆちゃんに乗り移っていなかったら、間違いなく明日イタリアンかフレンチに誘っていた。
かといっていきなり回転寿司というのもなんなので、明日は和食かちょっと奮発して回転していないお寿司屋さんにしようかな・・・

まゆちゃんには悪いけど、もうちょっと体借りるよ・・・

僕は再びみどりさんと一緒に街の中心へ歩き出した。


(つづく)





(※画像は加工可能なフリーイラスト集から使いました)

コメント

便利

憑依できるってこういう時便利ですよね笑
姉妹なら怪しまれないし。

純の今後に期待してます笑

No title

>しあむさん
ほんと便利ですよね(笑)
デートの事前偵察にピッタリ(苦笑)
しかも、自分は好きな人と血のつながった妹なんて…うひょ~!!(爆)

今、後編を書いているので、もう少々お待ちくださいm(_ _)m
純君の活躍にご期待ください(^^)
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