短編『星人式』



(※この作品にはグロテスクな表現が含まれているのでご注意ください※)





ここはとある町の市民ホール。
そこはスーツ姿の若い男性たちと晴れ着姿の若い女性たちでにぎわっていた。
今日は成人の日なのである。

市民ホールの前ではそれぞれ若者たちが成人式の開始を待っていた。
かつての同級生と再会し、ふざけあう男性たち。
華やかな晴れ着姿で集まって記念写真を撮る女性たち。
みんな少し照れくさそうに、時に高揚しながら、この一生に一度しかない日を謳歌していた。



「美南!おめでとう!!」

その中に向井 美南(みな)もいた。


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彼女はこの町で生まれ、この町で育ったごく平凡な女の子だった。
彼女は両親の愛情に恵まれ、すくすくと育った。
小さい頃からやさしくおおらかで、誰からも好かれた。
勉強も運動も平均的で、高校時代はバスケ部のマネージャーをしていた。
そして、地元の短大に進学し、今日という日を迎えたのだ。


「美南♪おはよ♪」

美南に親友の紀子が抱きついた。
紀子は美南と幼稚園の頃からずっと学校が同じで、美南と同じく今日は晴れ着に身を包み、ここに来ていた。
それをにこやかに見守る美南の母親。
普段はあまり着飾らない美南の母親も、今日はイベント用のフォーマルなスーツを着て娘の晴れ姿を見に来ていた。


彼女たちは会場からやや離れた人通りのまばらな駐車場にいた。
本当はホール前で開場を待ちたかったのだが、あまりに人が多くて断念したのだ。

「おばさん、お願いします!」

紀子はそう言うと、美南の母親にデジカメを渡した。

「えぇ、いいわよ」

美南の母親にデジカメの使い方を教え、美南に駆け寄り、ピースサインする紀子。
少し恥ずかしそうにピースサインをする美南。

 カシャ

シャッターが下りた。

「ありがとうございます!!」

紀子はデジカメを受け取ると、早速プレビューで今撮った写真を美南に見せた。

「おぉ、撮れてるね~!」

「うん」

そんな二人の様子を見守りながら微笑む美南の母親。
すべてが幸せの空気に包まれていた。



さて、そんな中、美南は何を考えているのだろうか?
「こんなかわいい晴れ着を着れてうれしい♪」だろうか「ついに二十歳かぁ」と大人の権利と責任を感じているのであろうか。
実はその時、美南は頭の中でこう考えていたのである。


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「ニンゲン、クイタイ・・・」と・・・。






















すべては一週間前にさかのぼる。
大学の授業を終え、ドーナツ屋のバイトに向かっていた美南の上に一つの丸い球体が降ってきた。
それは雪か雹(ひょう)と見間違えるほどごくごく小さい物だった。

しかし、実はそれは宇宙から降ってきた寄生獣の卵だったのである。
地面に落ちてすぐに孵化した寄生獣は、本能に従い、体を求め、たまたま近くを歩いていた美南に近づいた。
そしてヒル状の寄生獣は美南の耳の穴から体内に侵入し、たちまち美南の脳を食いつぶしてしまったのだ。

厳密にいうと、本物の向井美南はこの時に死んだ。
それ以後の彼女は、彼女にパラサイトし、なりすました寄生獣だったのだ。

寄生獣は人間を食べる。
しかし、この寄生獣は彼女になりすますため、今までずっと我慢していた。
正確に言うと、3日前に短大の友達を校舎裏に呼び出し、食べた。

それから我慢していたが、この成人式の会場に来て、大勢の人間を目の前にした時、グッと食欲が湧いてきた。
人間に例えるなら、おなかペコペコの時においしそうな料理が並ぶバイキング会場に来たようなものだ。
彼女の中で寄生獣としての本能が激しく蠢き出していた。



「モウガマンデキナイ・・・」


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くぱぁ

彼女の顔と手が変形し、ムチ状になった。

「あ」

次の瞬間、驚きの声を発するいとまもなく、紀子の首が吹き飛んだ。
そして、グニャとろくろ首のように美南の首が伸び、地面に転がっている紀子の生首を食べた。


あまりの一瞬の出来事に、美南の母親は悲鳴すら上げられなかった。
人間とはそういうものである。
目の前で起きたことがあまりに常識からかけ離れていると、人間は言葉を発することもできずただ硬直してしまうのだ。

自分の娘が得体の知れない姿になって、人を殺して食った・・・

文章にするとわかりやすいが、母親にとってはそれは悪夢としか思えない出来事で、飲み込めずにいた。


美南はゆっくりと母親のほうを振り向いた。
母親は尻持ちをつき、動けないでいた。
言葉を発しようにも、まるでのどに詰め物が入っているようで言葉が上がってこなかった。


「ニジュウネンカン、“コノカラダヲ”ソダテテクレテ アリガトウ・・・」

美南は母親を見下ろしながら無表情でそう言った。
左腕ごと美南の振袖が伸び、空中を舞った。
その振袖の影が母親を覆い、次の瞬間、鋭いカッターと化した振袖が何度も何度も母親を斬り刻んだ。
肉片が飛び散り、地面は血の海と化した。
母親のおなかから生まれ、彼女が母乳を与え、彼女が手塩を掛けて育てた娘の体が、彼女自身をミンチにしたのである。






「うわぁぁぁっっっ!!!」

その時、物陰から声がした。
たまたま忘れ物をして駐車場に戻ってきた新成人の男性が一部始終を目撃していたのである。
くるっと無表情のまま美南の顔が青年のほうを向いた。


「ばっ、化け物っ!!」

目が合った青年は腰を抜かしそうになりながら、一目散に会場のほうへ逃げ出した。
だが、次の瞬間。
パッとムチ状の刃が伸び、青年の体を縦真っ二つにした。
左右に分かれ、崩れ落ちる青年の肉片。


「ったく危ないところだったな」

美南が声のしたほうを向くと、そこにはもう一人の寄生獣がいた。


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「あんまし大勢のいる前で人間を食うもんじゃねぇぜ。いろいろ面倒なことになるからな」

「ワルカッタ・・・」

「ま、今回は同族のよしみってやつだ。次はないと思えよ」

そう言うと、もう一人の寄生獣は変形した部分を元に戻し、帯を締め直した。


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「由希~!式始まるぞ~!!」

遠くから男の声がした。

「じゃあ俺はもう行くぜ。この体の彼氏が呼んでるからな。その男の体はお前にやるよ。味わって食えよ」

「カンシャスル・・・」

美南の言葉を聞き終えると、もう一人の寄生獣は

「はい、今参りま~す♪」

と言って、成人式の会場へと消えていった・・・







(短編『星人式』おわり)


(※イラストは加工可能なフリーイラスト集を使わさせていただきました)




コメント

意味わからない

今ままでの作品の中で一番最低の作品でした。
意味が全然わからない、
面白いくない、さらに、成人式をバカにした最低の作品です 失望しました

やっぱり

やっぱりカブトのワームみたいな、人間以外なものがなりすますっていいですねw

寄生獣またよもうかな

No title

>りんごさん
はじめまして、コメントありがとうございますm(_ _)m
この作品の元ネタは岩明均氏の『寄生獣』という漫画です。
宇宙から未知の異生物がやってきて人間に寄生するという話です。

しかし、前もってグロテスクな表現があることを表記していなかった旨は申し訳ありませんでした。
不快な気持ちを与えてしまいましたらお詫び申しますm(_ _)m

私は人間と異星人の価値観の違い、つまり人間にとっては祝いの場である成人式も異星人にとっては狩場のように見えるというのを表現したかったのでありまして、決して私が成人式をバカにしているわけではないことを付け加えて申し上げますm(_ _)m

No title

>しあむさん
どうもいつもコメントありがとうございます(^^)

そうですね、小さい頃、初めて寄生獣を読んだ時は衝撃的でした。
大人になって読んだら、別の意味で興奮しました(苦笑)
田村良子萌え!!(爆)

人間から見たら醜悪な宇宙人が美女になりすましているというシチュはほんと好きです(笑)
カブトのワーム、ブルースワットのエイリアン、寄生獣のパラサイトは僕の好きな三大宇宙人です(苦笑)

寄生獣はビジュアルインパクトだけでなく、話の内容もすごく考えさせられて、今でも時折読み返したくなります。

遅れませながら

りんごさん
作者を罵倒した時点であなたも同罪です。
気持ちは分かるが、違った言い方も出来たのでは?

いろんな人がいるので、あまり作者さんも気になさらずに執筆して良いと思います。
最近は結構規制が多いので色々難しいですよね。。。。。

怖い

結構、怖かった。
最後の方の、母親が育てたとか書いてあるところは、何か怖かった

No title

>大人買いさん
どうもコメントありがとうございますm(_ _)m
ちょうど先週成人の日のニュースをやっていて、そういえば去年この作品を書いたよなぁ、と思っていたところにコメントをいただいたので、うれしかったです。

実際こういった宿主と寄生先の心情って気になりますよね。
前にネットでカタツムリに寄生する寄生虫がいることを知りました。
鳥のフンの中にいて、カタツムリに食われることで体内に侵入し、最終的にはカタツムリのツノの部分に入り、わざと鳥に食べられやすい動きをさせるという虫です。
そういった寄生先にとって自分の体や人生や努力はすべて別の何かのためだったもので、無情に死ぬより何か怖さを感じます。
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